パーキンソン病、多系統萎縮症の創薬につながる蛋白質の解明
– パーキンソン病、多系統萎縮症における脂肪酸結合蛋白質3 –

2022年8月1日

発表のポイント

  • パーキンソン病および多系統萎縮症の脳では、病気の根本原因であるαシヌクレイン凝集体に脂肪酸結合蛋白質3が沈着していることを発見

 

概要

パーキンソン病や多系統萎縮症は共に、αシヌクレインと呼ばれる蛋白質の凝集体が出現することにより神経細胞死がおきると想定されている脳の病気です。また、この凝集体が作られるのを防ぐ薬を調べることにより、将来の創薬に役立つ可能性があります。共同研究者の東北大学大学院薬学研究科の福永浩司名誉教授のグループは、パーキンソン病動物モデルにおいて脂肪酸結合蛋白質3の阻害薬を投与することにより病態に密接に関連するαシヌクレインの凝集体を減少させ、パーキンソン症状を改善することに成功しています。しかし、ヒトの脳で脂肪酸結合蛋白質3が存在するかどうかはまだ解明されていないことから、当院認知症疾患医療センターの大泉英樹センター長と武田篤院長らはパーキンソン病、多系統萎縮症および健常者の脳において脂肪酸結合蛋白質 3が存在するかどうかを調べました。その結果、(1)健常者の脳では神経細胞が豊富に脂肪酸結合蛋白質3を持っていたこと、(2)パーキンソン病および多系統萎縮症の脳ではαシヌクレインの凝集体に脂肪酸結合蛋白質3が沈着していたことを発見しました。今回の結果から、パーキンソン病および多系統萎縮症のヒト脳で、これらの疾患の病態に密接に関わっているαシヌクレイン凝集体の形成に脂肪酸結合蛋白質3が重要であることが示唆されました。

この研究成果は、科学誌Frontiers in Aging Neuroscienceにオンラインで2021年3月25日(日本時間)に掲載されました。

 

詳細な説明

パーキンソン病や多系統萎縮症は共に、αシヌクレインと呼ばれる蛋白質の凝集体が出現することにより神経細胞死が生じると想定されている脳の病気です。また、この凝集体が作られるのを防ぐ薬を調べることにより、将来の創薬に役立つ可能性があります。共同研究者の東北大学大学院薬学研究科の福永浩司名誉教授、川畑伊知郎特任准教授らは、パーキンソン病動物モデルにおいて脂肪酸結合蛋白質3の阻害薬を投与することにより病態に密接に関わっているαシヌクレインの凝集体を減少させ、パーキンソン症状を改善することに成功しています。しかし、ヒトの脳で脂肪酸結合蛋白質3が存在するかどうかはまだ解明されていませんでした。当院認知症疾患医療センターの大泉英樹センター長と武田篤院長らは、パーキンソン病、多系統萎縮症および健常者の脳において脂肪酸結合蛋白質3があるかどうかを調べました。その結果、(1)健常者の脳では神経細胞が豊富に脂肪酸結合蛋白質3を持っていたこと、(2)パーキンソン病および多系統萎縮症の脳ではαシヌクレインの凝集体に脂肪酸結合蛋白質3が沈着していたことを発見しました。

今回の結果から、パーキンソン病および多系統萎縮症のヒト脳で、これらの疾患の中心病態に密接に関わるαシヌクレイン凝集体の形成に脂肪酸結合蛋白質3が役割を果たしていることが示されました。さらにこの結果から、脂肪酸結合蛋白質3を阻害する薬がパーキンソン病の創薬となり得る可能性も示唆されると考えられます。

 

 

本研究は、日本医療研究開発機構の橋渡し研究加速ネットワークプログラム(AMED)「レビー小体病患者の病理解析とバイオマーカー探索」の研究助成により実施しました。

 

論文情報

雑 誌 名:
Frontiers in Aging Neuroscience
論文タイトル:
Fatty Acid-Binding Protein 3 Expression in the Brain and Skin in Human Synucleinopathies.
著   者:
Oizumi H, Yamasaki K, Suzuki H, Hasegawa T, Sugimura Y, Baba T, Fukunaga K, Takeda A.
DOI番号:
10.3389/fnagi.2021.648982.
U R L:
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnagi.2021.648982/full

 

問い合わせ先

<研究に関すること>
NHO仙台西多賀病院 脳神経内科医長 大泉 英樹
電話:022-245-2111

 

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