発表のポイント
- パーキンソン病の診断が皮膚組織検査で可能であることを報告した
- パーキンソン病皮膚で、マクロファージと呼ばれる免疫細胞にパーキンソン病の根本原因であるαシヌクレイン凝集体が存在することを発見
概要
αシヌクレインと呼ばれる蛋白質の凝集体はパーキンソン病の根本原因であり、この凝集体の出現により神経細胞死がおきると想定されています。脳組織で、このαシヌクレインの凝集体を調べることは病気の確定診断となりえますが、脳組織であることから確定診断は剖検後になってしまうのが現状です。また、この凝集体を除去することは根本治療となる可能性があることから、この凝集体を除去する免疫細胞を発見することは、将来の創薬に役立つ可能性があります。共同研究者の地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の斎藤祐子研究部長らは、パーキンソン病の死後皮膚に存在する末梢神経にαシヌクレインの凝集体があることを確認しました。そこで当院認知症疾患医療センターの大泉英樹センター長と武田篤院長らはパーキンソン病患者を対象に皮膚組織検査を行い、皮膚の免疫細胞がαシヌクレインの凝集体を持っているかどうかを調べました。その結果、パーキンソン病患者の皮膚でマクロファージと呼ばれる免疫細胞がαシヌクレイン凝集体を持っていることを世界で初めて発見しました。今回の結果から、将来パーキンソン病の診断に皮膚組織検査が確定診断のための重要な検査になり得ること、免疫細胞のマクロファージがαシヌクレイン凝集体の処理に重要であることが示唆されます。今回の研究成果はパーキンソン病の根本原因の解明と新たな創薬開発につながるものと考えられます。
この研究成果は、科学誌Annals of Clinical and Translational Neurologyにオンラインで2022年6月24日(日本時間)に掲載されました。
詳細な説明
αシヌクレインと呼ばれる蛋白質の凝集体はパーキンソン病の根本原因であると考えられており、この凝集体の出現により神経細胞死がおきると想定されています。脳組織で、このαシヌクレインの凝集体を証明することがパーキンソン病の確定診断となりますが、脳組織であることから確定診断は剖検後とならざるを得ないのが現状です。また、この凝集体を除去することは根本治療となり得ることから、凝集体を除去する免疫細胞を活用することは、病態に直結した創薬に役立つことが期待されます。共同研究者の地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の斎藤祐子研究部長、特任研究員である村山繁雄医師らは、パーキンソン病の死後皮膚にある末梢自律神経にαシヌクレインの凝集体が存在すること、皮膚組織検査が確定診断の検査方法として有用であることを示しました。そこで当院認知症疾患医療センターの大泉英樹センター長と武田篤院長らはパーキンソン病患者の皮膚組織検査を行い、(1)パーキンソン病患者の皮膚組織では末梢自律神経以外にマクロファージと呼ばれる免疫細胞にもαシヌクレイン凝集体が存在していること、(2)αシヌクレイン凝集体を持っているマクロファージがパーキンソン病の確定診断に有用であることを示しました。今回の結果から、将来皮膚組織検査がパーキンソン病患者の確定診断のための重要な検査方法になり得ること、病気の原因に免疫細胞のマクロファージが重要であることを発見することができました。
本研究は、日本医療研究開発機構の橋渡し研究加速ネットワークプログラム(AMED)「レビー小体病患者の病理解析とバイオマーカー探索」の研究助成により実施しました。
論文情報
- 雑 誌 名:
- Annals of Clinical and Translational Neurology
- 論文タイトル:
- Phosphorylated alpha-synuclein in Iba1-positive macrophages in the skin of patients with Parkinson's disease.
- 著 者:
- Oizumi H, Yamasaki K, Suzuki H, Ohshiro S, Saito Y, Murayama S, Sugimura Y, Hasegawa T, Fukunaga K, Takeda A.
- DOI番号:
- 10.1002/acn3.51610.
- U R L:
- https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/acn3.51610
問い合わせ先
<研究に関すること>
NHO仙台西多賀病院 脳神経内科医長 大泉 英樹
電話:022-245-2111