核医学画像に基づくパーキンソン病のサブタイプ分類
– パーキンソン病の多様性の解明 –

2023年8月29日

発表のポイント

  • パーキンソン病患者をMIBG心筋シンチとFP-CIT SPECTの核医学画像バイオマーカーに基づいて分類し、パーキンソン病には病理進展パターンの異なる2つのサブタイプが存在することを明らかにした
  • 発症初期より心臓交感神経障害が顕著なパーキンソン病患者はそうでない患者と比較して脳萎縮が目立っていた
  • 核医学バイオマーカーはパーキンソン病の予後予測においても極めて有用であり、個別化医療や治験において重要な指標となりうる

 

概要

 パーキンソン病は多様な運動症状と非運動症状を示し、目立つ症状、経過や薬剤の効果は患者により異なります。予後や治療反応性の予測のためにパーキンソン病では様々なサブタイプ分類が行われてきましたが、画像バイオマーカーによるパーキンソン病の分類はこれまで行われてきませんでした。
 パーキンソン病の診断にはMIBG心筋シンチと123I-FP-CIT SPECTの2つの核医学画像検査が用いられますが、これらは心臓交感神経と脳のドパミン神経という解剖学的に離れた2点の病理学的変化の重症度を評価するものです。本研究ではこの2つの画像を組み合わせて病理変化に基づいてパーキンソン病を分類し、臨床像や脳萎縮パターンの違いを検証しました。核医学画像のパラメータと罹病期間を因子とした解析によりパーキンソン病は主に発症初期に心筋交感神経障害が存在する群としない群の病理学的背景の異なる2群に分類されることがわかりました。心筋交感神経障害が顕著なサブタイプは発症初期から頭頂葉を主体とする脳萎縮を示し予後不良と考えられ、一方で心臓交感神経が保たれているサブタイプは長期にわたる良好な薬剤反応性を示し予後良好と考えられました。核医学バイオマーカー、特にMIBG心筋シンチはパーキンソン病の診断のみならず予後予測においても極めて有用であり、患者毎の個別化医療や治験において重要な指標であると考えられます。
 本研究結果は、2023年8月28日に国際医学雑誌『Movement Disorders』に掲載されました。

 

研究内容

 パーキンソン病は多様な運動症状と非運動症状を示し、目立つ症状、経過や薬剤の効果は患者により異なります。予後や治療反応性の予測のためにパーキンソン病では症候に基づいた様々なサブタイプ分類が行われてきましたが、臨床症状に基づく分類は経過の中で変動しやすく、病理学的基盤がはっきりしていないという問題がありました。病理学的背景に基づいた分類にはバイオマーカーによる分類が有用と考えられますが、その多くは未だ研究途上です。また画像バイオマーカーによるパーキンソン病の分類はこれまで行われてきませんでした。
 パーキンソン病の診断基準にはMIBG心筋シンチと123I-FP-CIT SPECTの2つの核医学画像検査が含まれます。これら2つの検査はこれまで診断に用いられてきましたが、心臓交感神経と脳のドパミン神経という解剖学的に離れた2点の病理学的変化の重症度を評価するものであり、この2つの画像の組み合わせでパーキンソン病の病理変化の広がりを推定し、臨床像や脳萎縮パターンの異なるサブタイプを同定することが可能ではないか、と仮説を立て検証を行いました。
 当院でMIBG心筋シンチと123I-FP-CIT SPECTの2つの核医学画像検査を同時期に行ったパーキンソン病患者56名を対象として核医学検査の画像的特徴と罹病期間を因子としてデータ駆動型の階層的クラスタ分析を行い、得られたサブグループにおける臨床的特徴および脳皮質萎縮のパターンを比較しました。クラスタ分析により発症年齢やドパミン補充療法への反応性などの臨床的特徴が異なる3群が同定され、2つの独立した臨床経過をたどるパーキンソン病のサブタイプの存在が示唆されました。パーキンソン病は主に発症初期に心筋交感神経障害が顕著な群とそうではない群の2群に分類され、心筋交感神経障害が顕著なサブタイプは病初期より頭頂葉優位の皮質萎縮を示し予後不良と考えられました。一方で心臓交感神経が保たれているサブタイプは長期にわたる良好な薬剤反応性を示し予後良好と考えられました。核医学バイオマーカー、特にMIBG心筋シンチはパーキンソン病の診断のみならず予後予測においても極めて有用であり、患者毎の個別化医療や治験において重要な指標となりうると考えられます。

結論:パーキンソン病患者をMIBG心筋シンチとFP-CIT SPECTの核医学画像バイオマーカーに基づいて分類することで、パーキンソン病には病理進展パターンの異なる2つのサブタイプが存在することを明らかにしました。核医学バイオマーカーはパーキンソン病の診断だけでなく予後予測においても極めて重要であり、個別化医療や治験において重要な指標となりうると考えられます。

 

 

 

 

論文情報

雑 誌 名:
Movement Disorders
論文タイトル:
Nuclear Imaging Data-Driven Classification of Parkinson’s Disease
著   者:
Tomoko Totsune, Toru Baba, Yoko Sugimura, Hideki Oizumi, Hiroyasu Tanaka, Toshiaki Takahashi, Masaru Yoshioka, Ken-ichi Nagamatsu, and Atsushi Takeda
DOI番号:
10.1002/mds.29582
U R L:
http://doi.org/10.1002/mds.29582

 

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