アルツハイマー病によって生じた大脳皮質基底核症候群の症例報告

2023年11月8日

発表のポイント

 大脳皮質基底核症候群はパーキンソン病の重要な鑑別疾患として知られているが、その症状や臨床経過、背景病理は非常に多彩で診断が難しい。しかし、背景病理ごとに特徴的な皮質症状が存在し、それを捉えることで診断につながることがある。今回、我々はアルツハイマー病によって生じた大脳皮質基底核症候群の症例について臨床経過および核医学画像的特徴を報告した。

 

概要

 大脳皮質基底核症候群はパーキンソニズムや麻痺がないにも関わらず随意的な手指の動きが障害される失行などの症状を生じる症候群の総称であり、パーキンソン病の重要な鑑別疾患としても知られている。大脳皮質基底核症候群は病理学的には大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体病やアルツハイマー病など様々な神経変性疾患によって生じることが明らかとなっているが、日常臨床では生前に背景病理を正確に診断することは未だに難しいのが現状である。今回我々は大脳皮質基底核症候群の患者でBalint症候群と呼ばれる重度の視空間認知障害を伴う症例を経験し、髄液バイオマーカー検査およびアミロイドPET検査を行ったところ、アルツハイマー病に伴う大脳皮質基底核症候群と診断できた症例を経験し、その経過を英文誌Alzheimer Disease Associated Disorderに報告した。特徴的な臨床症状から背景病理を特定しえた大脳皮質基底核症候群の報告は少ないが、生前に診断がつけば適切な治療やケアにつながり、さらに将来的には疾患修飾療法による先制医療にもつながるものと期待された。

 

論文情報

雑 誌 名:
Alzheimer Disease & Associated Disorders
論文タイトル:
A Case of Corticobasal Syndrome and Posterior Cortical Atrophy With Biomarkers of Alzheimer Disease
著   者:
Yoko Sugimura, Toru Baba, Michinori Ezura, Akio Kikuchi, Takafumi Hasegawa, Isao Nagano, Kyoko Suzuki, Atsushi Takeda
DOI番号:
10.1097/WAD.0000000000000560
U R L:
https://journals.lww.com/alzheimerjournal/abstract/2023/07000/a_case_of_corticobasal_syndrome_and_posterior.11.aspx

 

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